研究論文
遺伝性球状赤血球症の患者において溶血の一因となる酸化ストレスはパパイヤ発酵食品(FPP)によって改善できる
Oxidative stress contributes to hemolysis in patients with hereditary spherocytosis and can be ameliorated by fermented papaya preparation
Ann Hematol. 90(5):509-513,2011
遺伝性球状赤血球症(HS)は、主に膜タンパクの欠乏により赤血球(RBC)形状に異常がおきる遺伝性疾患であり、このため、RBCの寿命が短縮される。さらに、HSの臨床症状において、酸化ストレスによる蛋白質の欠乏がしばしば観察されており、主に溶血に関与すると考えられている。本研究では、HSにおける酸化ストレスの役割に注目し、抗酸化作用を持つパパイヤ発酵食品(FPP)のHS-RBCに対する効果をin vitroおよびin vivoの両方で評価した。
フローサイトメトリーを用いて、7家族、17名の HS患者由来のRBCは、正常なRBCと比較して、より多くの活性酸素種、膜脂質過酸化物を生成し、グルタチオンを減少させることを示した。in vitroでFPPと共に7人の患者のHS-RBCを培養したところ、酸化ストレスマーカーが有意に減少した。同様に10人の成人HS患者に3ヶ月間、1日3回食後にFPP3gを与えたところ、溶血を起こす傾向が弱まる結果が得られた。ヘモグロビンレベルは >1g/ dl増加し、平均赤血球ヘモグロビン量は>1g/ dl減少し、網状赤血球数は0.93%減少した。 付随して、乳酸脱水素酵素は17%、間接ビリルビン値も50%減少した。マロンジアルデヒドもまた有意な減少がみられた。
これらのデータは、酸化ストレスがHSの病態生理学において重要な役割を果たしており、FPPのような抗酸化剤によりHSが改善され得ることを示唆している。 FPPおよび他の抗酸化剤を用いたさらなる臨床試験が望まれる。
(図)酸化ストレスとHS-RBCの溶血に対するFPPのin vitroでの効果
A)、HS患者のRBCを、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で希釈し、0.1 mg / mlのFPPを加えたもの、またはFPPを加えないもので2時間培養した。ROSおよびGSHの分析を行った。結果は17人の患者の平均MFCとして示す。
B)、3人の HS患者のRBCを、PBSまたはそれらの自己血漿中で希釈し、示されたFPP濃度を加え、37℃、一晩培養した。細胞を遠心分離し、上清中のヘモグロビン濃度を測定した。
C)、一人のHS患者のRBCを、PBSで希釈し、0.1 mg / mlのFPP有りと、FPP無しで一晩培養した。溶血は、FPP(左のチューブ)無しの場合に存在するが、FPP(右チューブ)有りの場合では培養後には存在しない。
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