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学術発表関連
放射線被曝に対するFPPの効果についての論文が
『Radiation Research』に掲載されました
放射線被曝に対するFPPの効果についての論文が『Radiation Research』に掲載されました。
放射線被曝に対するパパイヤ発酵食品(FPP)の効果
掲載された論文の要約は以下の通りです:
放射線は、様々な形態で細胞の損傷を引起こし、それにより早期の細胞死や体細胞変異の蓄積がもたらされ、悪性腫瘍の発生や進行につながる可能性がある。損傷の一因は、フリーラジカル、特に活性酸素種(ROS)である。パパイヤ発酵食品(Fermented Papaya Preparation:FPP)は、未完熟のパパイヤを発酵させた食品で、多くの臨床試験から抗酸化作用、抗炎症効果、免疫システムの調整機能が明らかになっている。また、FPPは、βサラセミア患者の血液中のROSを消去し、過剰な鉄をキレートする抗酸化能を持つ可能性も示唆されている。そこで、ヒト細胞およびマウスへの放射線に対するFPPの影響について報告する。
ヒト包皮線維芽細胞、骨髄性白血病細胞に、異なる線量(0~18Gy)で放射線を照射した。濃度の異なるFPPを照射前と後に加え、1 ~ 3日後に細胞生存率・アポトーシス・DNAの酸化損傷・DNAの不安定性について分析した。細胞生存率は細胞増殖試験を、アポトーシス、DNA酸化損傷はフローサイトメトリーを、DNAの不安定性はコメット・アッセイを用いた。マウス(1グループ6匹)に対しても同様の分析を行い、FPP投与は、照射前・後に飲み水に加える方法で行った。
細胞およびマウスにおいて、放射線照射により誘発されたDNAの酸化損傷の指標である8-OG(8-oxoguanine)の生成やDNAの不安定性に対しFPPは有意な改善効果があった。また、アポトーシスは減少し、細胞生存率は上昇した(図A)。さらに、10Gyで照射した結果、FPPを投与していないマウスの生存率は0%だったが、100 µg/ml FPPを投与したマウスでは濃度依存で生存率が高まり3週間後でも100%と全て生存出来た(図B)。
これらの結果は、細胞やマウスへの放射線の短期的影響に対するFPPの保護効果を示しているといえる。FPPによるDNAの不安定性の改善は、原発性腫瘍の放射線治療を受けた患者の二次的な悪性腫瘍の発症といった放射能の長期的影響に対し、効果を持つ可能性を示唆している。
培養された正常なヒト包皮線維芽細胞(図A)およびマウス(図B)の 放射線照射により誘発された致死性に対するFPPの影響
図A : ヒト包皮線維芽細胞に異なる線量の |
図B : マウスに異なる線量の |
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