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FPP Research DiscussionFPP研究ディスカッション ‐放射線の人体への影響‐
数多くのFPPの基礎、臨床研究を通して、大里研究所は長時間のフライトにより人体が放射線から受ける影響とそれに対するFPPの有用性に着目してきました。東京‐ニューヨーク間なら飛行時間は約13時間。この飛行中に人間は宇宙からの自然放射線約100μSv(図1参照)、1時間あたりに換算すれば約7.7μSvを浴びます。しかしながら飛行機での移動は安全であり、科学的には飛行中の放射線のリスクは明白には解明されていません。健康な人であれば何の問題もなく体が本来持っている抗酸化システムと免疫システムで防御し、回復します。しかし病気を持っている人や免疫システムが弱っている人であれば、放射線によるDNA損傷の影響が考えられ、健常人と比べ回復にも時間がかかる可能性があります。
この度日本で未曾有の震災が起き、被災地の原子力発電所で水素爆発が起こったことにより、放射線が体に及ぼす影響について世界中が注目しています。東京では水素爆発から間もない3月15日に1時間当たり0.8μSvの環境放射線が測定されました。前述の長時間のフライト中に浴びる放射線量と比べても約1/10の低い値ですし、しかもこれは一時のことで、その後は平常値の0.028~0.079μSvに近い値が続いており、4月21日の平均値は0.072μSvです。しかしながら多くの人が不安に感じています。
そこで私達は放射線が体に及ぼす影響とそれに対するFPPの有用性について緊急メッセージを発信することにしました。
放射線が人体に影響を与える仕組みは、直接的なものと、間接的なものの2通りに分けられます(図2参照)。
まず放射線の直接的な人体への影響として、体を作る必要な情報を持つ細胞の遺伝子(DNA)を傷つけます。DNAが傷つくことで、細胞死、突然変異を引き起こし、病気へと進行していくリスクが高くなります(図3参照)。
また放射線の間接的な人体への影響として、放射線は体内で活性酸素を発生させます。浴びるだけでなく、呼吸や食品からも放射線の影響が考えられます。体内で発生した活性酸素がDNAの塩基損傷と切断をすることで、正常な細胞が作られず、体の機能低下を引き起こします。
図3:DNAが傷つくことで起こる影響
FPPは抗酸化、免疫システムの働きを調整することから、世界各国で多くの臨床研究が発表されています。これまでに、FPPにはDNAが傷つくのを防ぐ働きや炎症を抑える働き、病気へと進行するリスクを軽減する働きがあることが分かっています。近年では傷ついた組織の早い回復を助けていることも分かってきました。
その中でもFPPを摂取することで、DNAが傷つく度合いを示す8-OHdGが減少し、ガンへの進行度合いを示すDNA付加物を制御していること、また体が本来持っているいくつかの生体修復防御システムである、活性酸素を除去する酵素SODや、DNA中の8-OHdGを特異的に取り除く酵素hOGG1の遺伝子が多く発現しているという結果が得られていることから、FPPはDNAが傷つくのを防御し、修復している機能を確認できました。
これらの臨床研究論文から、FPPはDNA損傷から病気への進行のリスクを防御できる可能性を示唆していると言えるでしょう。
同様に放射線によって引き起こされるDNAの損傷に対してもFPPのポジティブな作用が期待されます。放射線の影響への不安を少しでも軽減できるよう、FPPの放射線に対する防御作用についての検討を今後の研究課題としています。
― FPPの抗酸化に関する論文 ―
FPPの臨床研究は広い分野に及んでおり、各分野においてその有用性のエビデンスが得られています。FPPの抗酸化の機能は、活性酸素を抑える直接的作用のみならず、FPPの摂取により体内での抗酸化システムや免疫システムが活性化されて身体自身の回復機能を高めていくことによるものとされています。
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◆抗酸化の働き
1). Nutraceutical Supplementation: Effect of a Fermented Papaya Preparation on Redox Status and DNA Damage in Healthy Elderly Individuals and Relationship with GSTM1 Genotype
F. MAROTTA, M. WEKSLER, Y. NAITO, C. YOSHIDA, M. YOSHIOKA, AND P. MARANDOLA,
Ann. N. Y. Acad. Sci. 1067, 400-407 (2006)
健康な高齢者54人を対象に3ヶ月間のFPP摂取により白血球中のDNAが傷つくことにより排出される8-OHdGと、発ガンリスクを示すマーカーであるDNA 付加物の値が改善された。特に解毒排出をつかさどるGSTM1遺伝子を持たない人では、FPPを摂取することで顕著に8-OHdGとDNA付加物の値が減少した。
2). Oxidative-inflammatory damage in cirrhosis: Effect of vitamin E and a fermented papaya preparation
Francesco Marotta, Chisato Yoshida, R Barreto, Yasuhiro Naito, E Fesce and Lester Packer,
J. Gastroenterol. Hepatol. 22, 697-703 (2007)
C型肝炎ウイルス由来の肝硬変の患者50人を対象に、6ヶ月FPPを摂取することで、酸化還元反応の指標であるGSH、GSH-Px、GSSG、MDA、血清中のTNF-α、白血球中の8-OHdG濃度が、健康な人に近づく改善を示した。肝硬変の患者は、酸化ストレスを受け続けると、肝がんへと進行するが、FPPを摂取することで、酸化還元反応および免疫調整が行われ、病気の進行を遅らせる可能性を示した。
3). Assessment of the effect of fermented papaya preparation on oxidative damage in spontaneously hypertensive rat brain using electron spin resonance (ESR) imaging and L-band ESR spectroscopy
Fumihiko Yoshino, Masaichi-Chang-il Lee, Kyo Kobayashi, Yuki Hayashi, Okezie I. Aruoma,
Journal of Functional Foods 1 , 375-380 (2009)
生体内でどのように過剰な活性酸素の消去が行われるのかSHRラットの脳のフリーラジカル量をイメージング測定した結果、FPPを摂取することで、摂取してないラットに比べて速やかにフリーラジカルを消去する結果が得られた。
4). Amelioration of Oxidative Stress in Red Blood Cells from Patients with β-thalassemia Major and Intermedia and E-β-thalassemia Following Administration of a Fermented Papaya Preparation
Eitan Fibach, Ee-Shien Tan, Saumya Jamuar, Ivy Ng, Johnny Amer and Eliezer A. Rachmilewitz,
Phytother. Res. 24, 1334-1338 (2010)
βサラセミアという血液の遺伝子異常の病気の患者を対象に、6ヶ月のFPP摂取で赤血球・血小板・白血球すべてにおいてGSHが上昇し、ROSが減少したという結果が得られた。この試験はイスラエル、シンガポール、タイにおいて同様の結果が得られており、サラセミアのような酸化損傷が病気の症状として現れやすい疾病に対してもFPPが酸化状態を改善することが示された。
◆抗炎症の働き
1). Nutraceutical Strategy in Aging Targeting Heat Shock Protein and Inflammatory Profile through Understanding Interleukin-6 Polymorphism
F. MAROTTA, K. KOIKE, A. LORENZETTI, Y. NAITO, F. FAYET, H. SHIMIZU, AND P. MARANDOLA,
Ann. N. Y. Acad. Sci. 1119, 196-202 (2007)
健康な高齢者40人を対象として、3ヶ月間FPPを摂取すると、炎症性マーカーであるIL-6やTNF-αは減少し、逆に保護するヒートショックタンパク質であるHsp70は上昇した。
2). Improved Function of Diabetic Wound-Site Macrophages and Accelerated Wound Closure in Response to Oral Supplementation of a Fermented Papaya Preparation
Eric Collard and Sashwati Roy,
Antioxid. Redox Signal. 13, 599-606 (2010)
糖尿病マウス(db/db)への8週間のFPP経口投与により、体重は増加せず、血糖値の上昇が抑制された。LDL、TGL、TCHOLの数値は減少し、HDLは上昇した。FPPを摂取しないラットと比較して、傷口が閉じるまでの日数の短縮と血管形成の速度の有意な上昇が見られた。また、iNOS、VEGF遺伝子発現は上昇した。このことから、FPPは傷の治癒に関わるマクロファージの働きを活性化させ、回復までの時間を早められる可能性が示された。
◆遺伝子の発現
1). Regulating Redox Balance Gene Expression in Healthy Individuals by Nutraceuticals: A Pilot Study
Francesco Marotta, Keiko Koike, Aldo Lorenzetti, Shalini Jain, Paola Signorelli, Yussef Metugriachuk, Pierre Mantello, and Nicola Locorotondo,
Rejuvenat Res. 13, 175-178 (2010)
健康で、非喫煙・非飲酒・ビタミンやサプリメントなどの健康補助食品を摂取していない11人を対象に、4週間のFPP摂取によるGSH-Px、SOD、hOGG1を生成させる遺伝子の発現量を測定した結果、免疫システムに関わる白血球において2週間目には発現量が上昇し4週間目まで維持された。このことより、FPPは体内での免疫力や抗酸化作用の働きを調整することが分かった。
◆レビューペーパー
1). Applications and bioefficacy of the functional food supplement fermented papaya preparation
Okezie I. Aruoma, Yuki Hayashi, Francesco Marotta, Pierre Mantello, Eliezer Rachmilewitz, Luc Montagnier
Toxicology(2010)
◆参考図書
「病気を寄せ付けない賢い生き方」
リュック・モンタニエ著 医学監修:根路銘国昭 翻訳:田中裕子 イーストプレス発行
大里研究所理事であり、2008年ノーベル医学生理学賞受賞者のリュック・モンタニエ博士の著書
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- 2011.03.31
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