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2020/12/24お知らせ

日本パスツール財団セミナーシリーズ2「感染と免疫」協賛

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 一般財団法人日本パスツール財団が主催し、大里研究所も協賛した『日本パスツール財団セミナーシリーズ2「感染と免疫」』が、12月5日に開催されました。昨年6月のセミナーシリーズ第1回と同じく、北海道大学ユニバーシティ・プロフェッサーの喜田宏先生が座長を務め、セミナーが進められました。本来であれば3月14日に開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響で延期されていました。会場での直接参加はごく少数に絞られ、70名以上がオンラインでの参加となりました。

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 1人目の講師として国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長の長谷川秀樹博士が「インフルエンザ及びコロナウイルス感染症の病理」をテーマに発表された。
インフルエンザと新型コロナウイルスでは、重症時に大きな違いがあり、インフルエンザでは、最も多いとされる細菌性肺炎の併発に始まり、脳症、心筋障害が起こる。ごく稀に鳥インフルエンザなどのウイルス性の肺炎がある。
新型コロナウイルスでは、季節性インフルエンザでは少ないとされている、肺そのものがウイルスに感染するウイルス性肺炎が主であり、細菌性肺炎の併発も起こったり、あるいは血栓症によって死に至る。長谷川博士によると、肺の部位によって進行が異なるため、血液を介した因子によるものではなく、気道的に広がっており、ダメージを受けるのは、呼吸器が主要部だと言える。また、インフルエンザは、全ての人が感染を広げ、それぞれ感染するが、新型コロナウイルスでは、10人のうち2人が多くの人に広げており、残りの8人は誰にも感染させていないという伝播の仕方も異なるそうだ。

 続いて2人目の講師として熊本大学大学院生命科学研究部教授の押海裕之博士が「新型コロナウイルスに対する自然免疫応答と新たな治療薬の開発」のテーマで発表された。
免疫には、生まれながらに持っている免疫システムである自然免疫と、一度感染した病気に対して抵抗性を示す免疫システムである獲得免疫がある。
新型コロナウイルスは一本鎖プラス鎖RNAウイルスである。押海博士によると、ヒトの上皮細胞内で、新型コロナウイルスのRNAの2箇所を自然免疫が認識している。しかし、認識する能力を持ってはいるが、感染の現場では認識できていないことがわかってきた。新型コロナウイルスのタンパク質が自然免疫を抑制するため、免疫が混乱し、重症化してしまうのだ(サイトカインストーム)。そこで博士は、混乱した自然免疫を制御する治療薬の研究に着手している。自然免疫標的型治療薬は、新しいウイルスにも効果があり、ウイルス標的薬であるアビガンやレムデシビルと併用でき、自然免疫の記憶を誘導できることから、予防薬になる可能性もあるという。自然免疫を誘導できる点で、BCGワクチン接種者が新型コロナウイルスで重症化しにくいのではないかと言われているが、今のところ断言まではできないそうだ。

 3人目の講師、大阪大学微生物病研究所の荒瀬尚博士は、「ペア型受容体を介した宿主病原体相互作用-マラリアから新型コロナウイルス感染症の重症化機構」について発表された。
マラリアは、マラリア原虫由来の感染症で年間40万人が死亡している。一度感染しても何度も感染する世界的に重要な感染症の一つである。
新型コロナウイルスは、ウイルス表面にあるスパイクタンパク質が、ヒト細胞上の受容体であり小腸や腎臓で発現されているACE2に結合することで細胞に感染する。さらに、新たな受容体として、L-SIGNとDC-SIGNを介して感染することがわかってきた。
中和抗体とは、ウイルス感染を防止する力のある抗体である。しかし、新型コロナウイルスの中和抗体ができても、増強抗体があると中和抗体が作用しなくなってしまう。中和抗体が高いと、増強抗体が強くてもうまく働き問題にはならないが、中和抗体が低いと、増強抗体が低かったり高かったりと非常に個人差がでる。博士は、増強抗体の存在が、新型コロナウイルス感染症の重症化するかどうかを決める要因ではないかと考えている。
さらに、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に対する抗体は、中和性があって良いものと考えられてきたが、患者によっては中和抗体より先に増強抗体が産生される場合があり、逆にACE2の結合性を高めて感染増強させる抗体が存在することも明らかになってきた。以上のことから、ワクチンに用いるスパイクタンパク質も増強抗体を誘導しないよう改変した方が安全である可能性があると述べられた。

 参加者は、第一線で活躍される3名の博士から、新型コロナウイルスの基礎的な情報や、ワクチンについて、さらには通説をひっくり返す新たな発見を知ることができた。
終始わかりやすい図や解説があり、質疑応答も盛んに行われた。専門家ではない人々も、現時点でわかっている新型コロナウイルスの様態を理解することができ、価値ある時間を過ごせた。

セミナーレポート 林 亜幸子