研究論文
ダイエタリーサプリメントは創傷部の炎症細胞における呼吸バーストを増強し得るか?
May Dietary Supplementation Augment Respiratory Burst in Wound-Site Inflammatory Cells?
Antioxidants & Redox Signaling, 2018 Feb 10;28(5):401-405.
炎症が長く続くと創傷は慢性化する。創傷部で治癒過程が開始されるためには、免疫細胞でNADPHオキシダーゼ(NOX)を活性化し、感染と戦う必要がある。
パパイヤ発酵食品(FPP)は炭水化物に富む栄養補助食品であり、齧歯動物(マウス)の実験系において呼吸バーストを強化することが立証されている。FPPには、グルコースだけでなく、フルクトース、マルトースに加え、イノシトールといった他の複数の糖アルコールが含まれている。我々は以前、FPPを与えた糖尿病マウスにおいて創傷部免疫細胞の呼吸バースト改善により創傷治癒が促進したことを報告している。
本臨床研究では、慢性創傷で陰圧閉鎖療法を受けている患者22名を対象とし、標準治療を行いながらFPPを1日に3g×3回摂取するグループ(FPP摂取群)と標準治療のみを行うグループ(コントロール群)にランダムに分け試験を行った。0週と2週間後に誘導型ROSの測定、傷体積の測定を行った。また血液検査を行い、FPPが慢性創傷患者に対し安全であるかを調べた。創傷部免疫細胞から産生されたROSは、コントロール群と比較してFPP摂取群の方が有意に高かった(図1)。さらに、FPP摂取群において創傷治癒の促進が認められた(図2)。
FPPの主成分は炭水化物(その大部分はグルコース)であるにも関わらず、FPP摂取群のHbA1c(ヘモグロビンA1c)値が上昇しなかったことは特筆すべきである。以上のことから、検証には長期臨床試験が必要ではあるが、FPPは創傷部免疫細胞におけるNOX活性を高めることで創傷治癒を改善することが示唆された。