研究論文

中高年及び高齢者における運動を介したNrf2/ARE活性化に対する発酵食品とビタミンEの効果の比較:無作為化二重盲検臨床試験

Comparing fermented food and vitamin E on exercise-mediated Nrf2/ARE activation in middle-aged/ elderly: A randomized, double-blind clinical study

Functional Food Science 2024; 4(11): 413-426

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6ヶ月間にわたる研究は、健康な68名の被験者(43-75)を、FPP1日9g摂取するグループ(FPP)と、ビタミンE錠剤を12(400IU/)摂取するグループ(ビタミンE)に無作為に分け実施した。被験者は、週2回の段階的運動負荷歩行試験(GEWT)に加えて、TAC(総抗酸化能)と末梢血単核球のNrf2活性に関連する遺伝子発現レベル(核内Nrf2, NQO1, HO-1)を毎月測定した。
結果は、両群とも、6ヶ月間にわたり生化学検査値とBMI値は安定しており、血漿中のTACは有意に改善され(p0.01)、ビタミンEにおいては、3ヶ月目からTACに対する効果を認めた。一方で、Nrf2活性化を示す核内Nrf2、抗酸化酵素を産生するNQO1およびHO-1の遺伝子発現量の増加は、FPPでのみ改善効果を認めた(有意差あり, p0.01)(1)

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(1)試験開始6ヶ月後の中・高齢者におけるFPPおよびビタミンEの改善効果

加齢によるNrf2活性の差を検証するために、FPP群を4群に分け比較した(I4350II5158 III5966 IV: 6775)。核内Nrf2の遺伝子発現量(2-a)は、IV群ではIおよびII群と比較すると増加は緩やかだったが、全年齢群においてベースライン(開始時)およびビタミンE群と比較すると有意に増加した。抗酸化遺伝子NQO1の発現量(2-b)は、全年齢群においてFPPにより1ヶ月後から有意に増加し、これは6ヶ月間にわたり維持された。また、HO-1遺伝子発現量(2-c)は、全年齢群においてFPPにより有意に増加し、I群およびII群においては1ヶ月後から、III群およびIV群でも3ヶ月後には、より顕著な増加を認めた。

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(2)各年齢群におけるFPPによる核内Nrf2NQO1HO-1遺伝子発現量の変化

本研究により、FPPは、抗酸化作用を有するのみならず、身体の抗酸化・抗炎症システムを制御するNrf2シグナル伝達を増強することで、生体防御機能を総合的に活性化することが明らかとなった。また、最も高齢なIV(67-75)においても、FPPと定期的な運動の併用によりNrf2活性に関連する遺伝子発現レベルの改善効果が確認された。
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