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FPPの放射線防御効果に関する研究の続報放射線防御効果 続報
このレポートは、培養細胞およびマウスの放射線誘発損傷へのFPP の効果についての
試験結果をまとめたものである。
照射はGammacell 220 (MDS Nordion, Excel, Canada)で行われた。
【In vitro 試験】
ヒト包皮線維芽細胞を96ウェルプレートに、2000 cells/well で播種した。一晩培養後、細胞の付着したプレートを0, 6, 12,18 Gyの線量で照射した。照射後、(0.22 μm フィルターで濾過滅菌された) 濃度10, 50,100 µg/mlの FPPを各ウェルに加え、細胞を2日および3日培養した。細胞生存はCellTiter 96 Aqueous Non-Radioactive Cell Proliferation assay for cell vitality を用いて測定した。
浮遊細胞のヒトHL60細胞を使って追加実験を行った。細胞は、いくつかの線量で照射し、その後FPP で処置した。24時間後、ホスファチジルセリンの露出とプロピジウムヨウ化物染色 (アポトーシスと細胞生存のマーカー) を測定した。
【In vivo 試験】
マウスに0, 6, 10, 14 Gyの線量で照射した後、(飲み水に加える方法で)FPPを与えた。
3日後、大腿骨骨髄のホスファチジルセリンの露出とプロピジウムヨウ化物染色を測定した。
マウスをいくつかの線量で照射し、その後(飲み水に混ぜた)FPP を与え、3週間毎日観察した。
【結果】
結果から、放射線を照射された細胞およびマウスに対するFPP の有意な保護効果が示唆された。
【考えられる作用のメカニズム】
放射線誘発損傷は、一つにはフリーラジカルによって、特に酸素フリーラジカル(活性酸素種, ROS) [1]によってもたらされる。毒性ROSはまた、"不安定鉄"(ヘモグロビンやフェリチンなどのタンパク質とつながっていない"自由な"細胞鉄)によっても生成される。これらの鉄種はROSを生成する化学反応(ハーバー・ワイス反応やフェントン反応)に関与する。
FPPの抗酸化力の可能性は示唆されてきており、最近では、これが単に(スカベンジャーとして) ROS を結合させたり除去したりする能力だけではなく、(キレーターとして) 過剰な鉄を結合させたり(血液や細胞から) 除去したりする能力によるものであることがわかっている。[2].
【今後の計画】
現在出ている結果をもとに、パブリケーションのデータを準備するために、DNA と突然変異生成へのFPP の特異な防護効果について以下の追加研究を行う価値があるだろう。放射線の長期にわたる発がん効果を考えれば、こうした点についての研究は重要である。
In vitro 試験
FPP で処置した照射された細胞のDNA 中のグアニンヌクレオチドの酸化(8-OHdG) (DNA 損傷のマーカー)、およびヒ ポ キ サ ン チ ン - グ ア ニン ・ フ ォ ス フ ォ リ ボ シ ルトラ ン ス フ ェ ラ ー ゼ(HPRT)変異株の生成を試験する。
In vivo 試験
照射されFPP を与えられたマウスの末梢血白血球のDNA 中の8-OHdG、および赤血球のGPI- (ネガティブ)フェノタイプ(遺伝的不安定および変異のマーカー)を測定する
【レファレンス】
- Reizenstein P. Iron, free radicals and cancer. Med Oncol Tumor Pharmacother. 1991;8:229-233.
- Prus E, Fibach E. The antioxidant effect of fermented papaya preparation involves iron chelation. J Biol Regul Homeost Agents. 2012;26:203-210.
- 2013.01.08
- 研究関連